“走馬灯”
小説の中で、危機に瀕している状態で昔の記憶が一気に蘇ったりする描写を目にすることがあるかもしれません。
実際に経験した人はあまり聞かないため、あくまでもフィクションや都市伝説のように感じている人が多いのではないでしょうか。
この程、偶然に入手したデータから走馬灯に実在の可能性が出てきたのです。
エストニア・タルトゥ大学のラウル・ヴィセンテ博士ら研究チームが2016年に、87歳のてんかんを患っている男性の脳波測定を治療目的で行いました。
しかし、測定中に男性が心臓発作を起こし、この世を去りました。その際、偶然にも世界で初めて死にゆく人間の脳の活動を記録する事が出来たのです。
この研究の共著者であり、米ルイビル大学の脳神経外科医でもある、アジュマル・ゼマール博士によると、その男性が心停止する前後30秒間の脳波は、夢を見たり、集中していたり、何かを思い出そうとするなど高度な認識作業をしている時と、同じパターンになっていたといいます。
加えて、この脳波は、死亡といわれる心停止から30秒間続いたというのです。
結果から同氏は、死ぬ直前に人生の中で重要な出来事を最後に振り返っている可能性があると述べました。
続けて、これらの発見から人生が終わるタイミングは心臓が止まった時か、もしくは脳が停まった時なのか、臓器提供のタイミングにも関わるかもしれないといった疑問を投げかけました。
しかし、今回はあくまでもこの1例のみで、男性の脳には出血や腫れがあったため、解釈は複雑であると述べました。それでも同氏は、今後も研究を続けるとしています。
それは、同氏自身が脳神経外科医として遺族に死亡告知をしてきた辛い経験から、愛する人がこの世を去ろうとしている瞬間にも、人生の幸せな瞬間を思い起こしているかもしれないと学べたからと締めくくりました。