それは「後遺症」ではありません。心因性についてのコメントが話題

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あなたも知らず知らずのうちに、こう思ってしまっているかもしれません。
脳神経内科医のばりすた先生(@bar1star)のつぶやきが話題を呼んでいます。

患者さんがメンタルに問題を抱えたとき、周囲の人はつい、薬や手術の後遺症だと考えてしまいがちです。
しかしそれは優しさではないのだと、ばりすた先生は強調されています。

ネットの反応

・このツイートに出会えて
良かったです😂
・正しく理解するのは結構難しいですね。
・理解するまでいかなくても
こうゆうことがあるのだと 知っているだけでもだいぶ違うと思います
・○○の後遺症」という檻に安易に閉じ込めない。産業保健職にとっても必須の知識ですね。
・心因性という概念は今後整理されて、
機能性神経障害のイメージがもっと注目されるようになればいいな。

インタビュー

今回の投稿について、脳神経内科専門医であるばりすた先生(Twitter @Bar1star)がお話してくださいました!

―――今回心と体の不調に関しての投稿が話題を呼びましたが、こちらを投稿されることとなった経緯についてお聞かせください!

ばりすた先生:
われわれ脳神経内科医はもともと、痺れや痛み、意図しない身体の動きなどの神経症状を現場で診ることが多かったのです。ですので、症状や経緯、検査などから考えられる病気の候補を絞ることの重要性と難しさ、そして機能性(≒心因性)の障害しっかり判定することの重要性と難しさを痛感していました。
心因性、というとまるで精神が弱いとか、わざとやっているようなイメージを持ってしまいがちです。しかしこれまで「心因性」と呼ばれていた症状の大部分は、人体という複雑なシステムの中で、身体のハードウェアの異常ではなくソフトウェアの異常であるという解釈が主流となり、現在は「機能性」と呼ばれています。
また、機能性障害だけでなく何らかの疾患による(つまりハードウェアの異常による)神経症状も、患者さん自身が自分の状態をどう理解しどう捉えるかによって本人の苦痛が大きく変わってきます。 本人の大変さを受け入れつつ、正しい解釈を、納得のいくようにシェアすることが非常に重要なのです。
今回、ワクチン後遺症なるものの報道が見られました。私が見る限り、上に述べたプロセスが十分に行われていないか、行われていたとしてもその様子がきちんと報道されていないように思われました。 不必要な不安は症状にも悪影響です。 神経症状の正しい理解が広まることが大切です。不適切な報道が出た時に、脳・神経疾患の診療に携わる身としてしっかり声を上げなければと思い、こうしたツイートをしました。

―――ご自身もスポーツで体が動かなくなったというご経験をお話しされていましたが、 そのときはどのように対処されたのでしょうか?

ばりすた先生:
僕はテニスをするのですが、ある日サーブを打とうとしてラケットがボールに当たる直前に、別のコートからボールが転がって来たため突然ストップの声がかかりました。 ビックリして反射的に身体の動きを止めたのですが、なんとその直後から、サーブのモーションをして打とうとしたところで腰の筋肉が勝手に変な収縮をしてしまい、思った動きができなくなってしまったのです。
何度やろうとしても上手くいきませんでした。でも、サーブ以外のショットを打つことは問題なくでき、自分でも不思議でした。
職業性ジストニアという病気があります。野球のピッチャーのイップスもこれの1種です。他のことはできるのに投げるのだけが上手くいかない。これに近いことが自分の体に起こったのかな?と思いました。
僕の場合はプロのピッチャーのような強いプレッシャーに晒されているわけではないですが、急な動きの停止が原因で職業性ジストニアのようなメカニズムが自分に起こったのかな?と解釈し、焦らず過ごしているうちに、翌日には治っていました。他人から見たらわざとやっているようにしか見えないのに、自分でも思ったように身体が動かない現象というものは、知識として知ってはいても不思議な経験でした。

―――心因性と分かっていても、症状は起こりえるのですね…!
   そんな中でも、やはり知識をもつことは、パニックや落ち込みを防げるので大変有効だと感じました。
   それでは最後に、先生が健康を保つために大切にされていること、是非皆さんに伝えられたいことがありましたら、お教えください!

ばりすた先生:
正しい知識をもとに行動することです。
何か気になる症状があると、調べていくうちにどんどん不安になって、不安がまた不安材料を探そうとする悪循環になってしまうことがあります。そういう状況は不健全ですので、自分が不安のスパイラルに陥っているなと感じたらあえてそこから離れ、プロである医師に相談してもらえたらと思います。

医師の解説

今回のテーマとなりました「心因性」の症状について、もう1人の医師の先生に伺いました。
今回答えてくれたのは…

鈴木りょう(@drryo_s)先生

鈴木 りょう
心療内科医 東京大学医学部卒業
依存症やうつ病など、心の問題を専門としている。医学を学んできた立場から、心に関する知識や心との向き合い方を発信している。

鈴木先生:
皆さんが思う「心因性」とは、どんなイメージでしょうか?

ここで、心因性について少し詳しくお話ししましょう。
まず、うつ病をはじめとする症状の原因は「内因性」「外因性」「心因性」の3つに分けられます。
内因性はホルモンバランスの乱れなど、
外因性は交通事故などの物理的影響、
心因性はストレス(家族が亡くなるなど)を指しています。

この場合、心因性は「心が弱いから発症している」というイメージを持つ人が多いと思います。
しかしながら、同じ体験をした際にどう反応するかは人それぞれです。
例えば同じ大地震を経験しても、メンタルに問題を抱えてしまう人もいれば、問題なく生活できる人もいます。
もし外で強盗に遭ったとして、それから怖くなって家にこもる人もいれば、自分を守るために体を鍛えるようになった人など、行動が変わってきます。

そしてこのようなストレスを受けた際、心因性の病気を発症する人・しない人の大きな違いは
大きく分けると「遺伝」と「環境」があります。

まず遺伝については、元から父も母も強い場合は子供も同じように強くなりますし
両親が弱ければ子供も弱い遺伝子を受け継ぐことになります。

また環境的につらいことがあれば、もちろん人はその影響を受けます。
さらに人格は、過去の体験の積み重ねによって作られます。

このように「遺伝」と「環境」は、いずれも本人にとって「どうしようもない部分」から成立しています。
そのため安直に「心が強い・弱い」と外から批判するのは、自分も疑問を投げかけます。

「そんなの気のせいだ」「気の持ちようだ」と軽く扱われて苦しんでいる方には
どうか自分を責めないようにしていただきたいです。

そして今回のばりすた先生のツイートによって救われた方もいらっしゃると思います。
イメージで苦しむ方が減ることは、私も嬉しく思います。

―――鈴木先生、ありがとうございました!

日々、医療に関する新知識や話はメディアで発信されています。
そして本当に健康を守るためには、何が正しい知識なのか調べ、判断することが重要です。
今回のお話がご自身や周囲の人の様子に思い当たる方は、ぜひ一度「心因性」について調べてみましょう!

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