腸内細菌とその役割についての研究は、長きに渡り行われてきた重要なテーマだ。
そして今回、カリフォルニア工科大学の研究チームにより、また一つ情動と腸内細菌の関係が明らかにされた。
動物の腸に生息する細菌の集団 (マイクロバイオーム)は、 免疫系と代謝に影響を及ぼすことが示されている。
そしてさらに、脳の機能や気分に関係していることが明らかになっている。
例えば神経系の疾患を持つ患者の腸を調べると、明らかに異なる腸内フローラを持っている。
そして今回の研究は、マウスを用いた実験において、4 EPSと呼ばれる細菌代謝産物 (細菌が生み出す副産物) に焦点を当てた。
4 EPSは腸内で生み出されたあと、血流に吸収され、全身を循環する。
この特定の分子は、自閉症と統合失調症などの神経疾患系の特徴を持つマウスに高レベルで存在している。
また、マウスだけでなく 231人の血液を調べた調査では 自閉症スペクトラムの小児の4 EPSレベルは約7倍高かったことがわかっている。
そしてマウスに経口薬を投与して4 EPSを除去すると、マウスの不安行動は減少した。
また、これを機に26人を対象とした臨床試験も行われた。
ヒトの腸内で4 EPSを隔離させたところ、血液中および尿中の4 EPSレベルが低下した。
そしてこれに合わせ、26人の被験者において全般的な不安レベルが低下した。
今後の課題としては、腸内細菌の代謝産物がどのようにして情動を左右するのか調べていく必要があるという。