皆さん”PMS”ってご存知でしょうか?
女性特有の症状ですが、女性の中でも症状に個人差があり、社会の中では今一つ認知度が低いため中々理解されずに困っている人が多い傾向にあります。
また、あるデータによるとPMSによる社会経済的損失は、年間約6,800億円とも言われます。
このデータから見ると、PMSは女性個人の問題ではなく、もはや社会で考えていく課題と言えるのではないでしょうか。
そもそもPMSとは?
公益社団法人日本産科婦人科学会によると、PMSは月経前症候群(premenstrual syndrome : PMS)と言われるものだそうです。
月経の前に3~10日間続く精神的もしくは身体的症状で、
月経開始とともに軽くなったり、消えていく症状と言われています。
前述の通り、症状の種類や重さには個人差がありますが、主な症状については、以下の通りです。
精神神経症状
・不安 ・眠気
・イライラ ・抑うつ
・集中力の低下 ・睡眠症状
・のぼせ ・食欲不振/過食
・めまい ・倦怠感
・腹痛 ・頭痛
・腰痛 ・むくみ
・お腹の張り ・乳房の張り
原因はまだ解明されていないようですが、女性ホルモンが関係していると言われています。
黄体期と呼ばれる排卵から月経までの間には、
エストロゲンとプロゲステロンというホルモンが多く分泌されます。
これらが、黄体期の後半には急激低下し、脳内のホルモンなどに異常をきたすことが、現状では原因と考えられています。
しかし、脳内のホルモンなどはストレス等の様々な影響を受けることから、多くの要因からおきると言われています。
PMSによる労働損失
では、PMSに悩んでいる方はどのくらいいらっしゃるのでしょうか。
大塚製薬では「働く女性の健康意識調査」を全国の20~59歳の女性を対象に実施しました。
その結果、PMS症状の自覚がある人は49%と約5割もいると判明しました。
さらに、多くの人が不調を”人には相談しにくい”もしくは
“職場には迷惑をかけられない”、”会社内で責任が上がれば上がるほど相談できない”など
1人で悩んでいるという実態も明らかになりました。
また、約60%の人が企業へPMSの対策に取り組むべきと考えていました。
また、産婦人科医の尾西氏によると、実際にPMSにより家事や育児、仕事が手につかなくなることに悩まされる女性も多いと言います。
日本医療政策機構が2018年に実施した調査によると、45%の人がPMSなどの症状により、通常時に比べ仕事のパフォーマンスが半分以下になると回答したという結果もありました。
これらの結果から大塚製薬の西山氏は、企業は働く女性たちが抱える課題を把握し、”企業ごと”と捉えて対策を投じる事が重要と述べました。
対処法は?
尾西氏によると、「ヘルスリテラシー(※1)」が向上することで、PMSなどの症状が出ている時でも仕事のパフォーマンスが改善したり、臨んだ時期に妊娠ができた割合が高くなることが明らかになったそうです。
社会全体でもヘルスリテラシーを高めることで、女性の仕事のしやすさが高まることで大きなメリットが得られるとみられています。
PMSの対処法としては、まず女性自身がPMSを認識して、自身の体調変化を把握し生活習慣を見直すことが有効です。
食事面では、カフェインや甘いもの、塩分、アルコールは避けることが良いと言います。
反対に、タンパク質の豊富な食品、低GI食品(大豆食品、そば、キノコ類など)を積極的に取り入れることがオススメのようです。
尾西氏は、ライフプランニングには自分の持っている特徴や病気を把握していることが大切だと述べました。
さらに、婦人科は女性の身近なライフプランニングのパートナーと考えてほしいと強調しました。
生理前に気分が落ち込んだり、イライラしてしまう人は、まず気軽に婦人科を受診してみてはいかがでしょうか。
覚えておきたい用語
※1)ヘルスリテラシー:
東京都医師会によると、
ヘルスリテラシーとは「健康や医療に関する正しい情報を入手し、理解して活用する能力」のことだそうです。複数の国を対象にした調査によると、日本のヘルスリテラシーは欧米やアジア諸国に比べても低いという結果だったそうです。