リウマチ膠原病内科医 タックマン先生に聞いた!注意すべき関節症状4選

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リウマチ・膠原病は紀元前よりその発症と治療が見られたとされ、長い歴史を持っています。
しかしながら、具体的な症状や治療について、周知されていない面も少なくありません。
そこで今回は、リウマチ膠原病内科医のタックマン先生にお話を伺いました!

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タックマン先生

リウマチ膠原病内科医
リウマチ膠原病の診療を中心に、医療情報について発信する。埼玉県勤務。
著書に「そうだったのか! この1冊でスッキリわかる! リウマチ・膠原病の薬物療法の考え方・選び方・使い方」、「こんな対応はNG! 非専門医のためのリウマチ・膠原病診療」など。

―――膠原病の早期に見られる関節症状には、具体的にどのようなものがございますか?

タックマン先生:

・関節リウマチの場合

早期にはDIP関節・CM関節を除く手指や足趾から関節炎が生じることが多いです。手指でもDIP関節・CM関節のみの疼痛の場合は、変形性関節症のことが多いです。たまに肩や膝から関節炎を発症することもあります。脊椎や股関節から発症することは極めて稀です。関節炎は圧痛と腫脹を伴い、炎症が強いと発赤や熱感も伴います。また、1時間以上続く朝のこわばりを高頻度に認めます。典型的には3つ以上で左右対称性の手指の関節炎を呈することが多いですが、早期の場合は1・2個のみの関節に留まり、必ずしも左右対称性ではないことも多いです。


・脊椎関節炎(乾癬性関節炎・強直性脊椎炎・炎症性腸疾患関連脊椎関節炎・反応性関節炎)の場合

関節リウマチと異なり、脊椎関節炎の場合は手指や足趾だけでなく、肩、脊椎、仙腸関節、股関節のような大関節に炎症を呈することが多いです。さらに、手指の中ではDIP関節炎を高頻度に呈することも関節リウマチとの大きな違いです。関節炎の数は3-4個程度のことが多く、小関節の中でも足趾に関節炎を呈する頻度が関節リウマチより高く、左右非対称のことが多いです。脊椎関節炎はアキレス腱、足底筋膜、膝蓋周囲、肘関節外側上顆など、骨と付着する「付着部」に炎症が生じることが多いです。特に乾癬性関節炎の場合は、爪の変形と指全体の腫脹(指趾炎)も高頻度に認められます。


・強皮症の場合

強皮症の場合は基本的には関節「炎」は発症しませんが、皮膚の線維化による皮膚硬化により手指が動かしにくくなり、関節痛を自覚されます。そのため、関節リウマチによる朝のこわばりと誤診される例が多く見受けられます。


・上記以外の膠原病の場合

基本的には全ての膠原病で関節症状を呈する可能性があります。多くの場合は関節リウマチよりも炎症は軽く、関節破壊が進行することは稀です。症状発現部位は関節リウマチと同様に手指足趾が多いです。たまにSLEではJaccoud(ジャクー)関節炎という関節脱臼を伴う関節炎を呈することがあります。

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―――早期発見・治療に向け、先生が診療の際に留意されていることについて、ぜひお教えいただけますと幸いです!

タックマン先生:

関節症状に関しては上記のような特徴を念頭に診察を行い、関節炎の客観的評価のために、関節エコーを積極的に行うようにしています。また、症例によっては関節のMRIにより関節炎と評価と整形外科疾患の鑑別を行うこともあります。血液検査によりRF、抗CCP抗体、CPR、赤沈、MMP-3などを確認することも重要ですが、これらが陰性でもリウマチ性疾患は否定出来ないため、血液検査よりも症状、理学所見、エコー所見を重視しています。

膠原病の場合は、関節症状以外に、発熱、皮疹、光線過敏、口内炎、乾燥症状(ドライアイ・ドライマウス)、レイノー現象、近位筋筋痛、呼吸器症状(間質性肺炎による乾性咳嗽、労作時息切れ)、下腿浮腫(腎不全、心不全などによる)、末梢神経障害(血管炎による多発単神経炎)など各膠原病に特徴的な症状を中心に確認します。仮に血液検査で抗核抗体が陽性でも、各膠原病に特徴的な症状所見が認められなければ診断には至りません。

世間では「よく分からない症状=膠原病」という風に認識されているように思いますが、実際には特徴的な症状の有無が決めてとなるため、不定愁訴に惑わされずに各膠原病の特徴に焦点を当てて診療を行うことが、正しい診断と早期治療に結びつくものと考えています。

医師 診察 患者 検査

―――先生はリウマチ膠原病参考書を出版されていらっしゃいます。それぞれの書籍の推しポイント等について、ぜひお聞かせください!

タックマン先生:

・こんな対応はNG!非専門医のためのリウマチ膠原病診療

こちらは非専門医の先生がよく誤解されている点について紹介しております。各項目の冒頭に模擬症例を提示し、それに対して解説を行うという流れとしています。内容は関節リウマチに関する内容が多くを占めています。リウマチ膠原病患者さんの多くは初診時に非専門医の外来を受診されます。もちろん、疑ったらそのまま専門医に紹介して頂きたいのですが、実際には専門医に紹介するタイミングが遅れたり、不適切な管理が行われていることが多いです。そのために、基本的な考え方について学ぶことで、適切に専門医への紹介につなげることを目的としています。また、内容は内科医の視点で書いていますので、関節リウマチの診療を行うことが多い整形外科の先生には、是非お勧めしたいと思っています。


・この1冊でスッキリわかる!リウマチ・膠原病の薬物療法の考え方・選び方・使い方

こちらは表題通り治療について、研修医、内科専攻医、整形外科医、若手リウマチ医を対象に、治療についての基本的な内容について紹介しています。内容については多少私見もありますが、基本的にはある程度確立されていることに限って紹介しています。各項目の冒頭にポイントを箇条書きし、その後に適宜図表を用いて解説しています。パッと見は文章が多い内容に見えますが、あまり難しいことを言わずに、スイスイと読了して、最終的には全体像を理解出来るように工夫して執筆しています。恐らくこの内容を理解していれば、薬物療法の基本的な知識としては十分だと思いますし、リウマチ膠原病を専門としない先生方にも役に立てるのではなかと思っています。

先生の書籍は以下よりご覧いただけます!

リウマチ 膠原病 書籍 本 タックマン 診療 医療 治療法
リウマチ 膠原病 書籍 本 タックマン 診療 医療 NG対応

―――タックマン先生、本当にありがとうございました!

医療従事者へ向けられたお話はもちろんのこと、患者側の受信する判断基準にもなるご解説をいただきました。
正しい知識を身につけておくことにより、より素早い判断と早期治療が可能になるということを、タックマン先生はお教えくださいました。

先生はその他にもTwitterや書籍の執筆にて、リウマチ膠原病をはじめとした医療情報を発信されています。
ぜひチェックください!

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