数秒単位が時間軸となる救急医は、気力や体力はもちろん、瞬時の判断力や対応が求められます。
経験を積んでこそ身に付いていくことはとても多いと思いますが、医学生や研修医の時に知っておくべきことがあれば、学んでおきたいものですよね。
そこで今回、踊る救急医・三谷先生にお話を伺いました!
救急医。
日本救急医学会医学生・研修医部会運用特別委員会 委員/ICLSインストラクター/Antaa PJT みんなの救命救急科
SNSでは過去の医学生・研修医の頃の自分が本当に知りたかった事を中心に発信。
書籍:『みんなの救命救急科』出版
―――先生が「医学生・研修医の頃に知りたかった!」と思われた医療に関する情報には、どんなことがございますか?
★救急外来の診療に、どれくらいのコストが必要で、どれだけ患者さんの負担が大きいのかということ
多忙な中でも、コストに関する知識を踏まえた診療ができることは重要です。ここで、私が考案した「救急外来診療メニュー表」を提案します。
医師の視点からみてコストを理解しやすいよう、以下の3つの要素でまとめています。
①診察の【基本料】
②検査や処置の【実施分】
③休日・夜間などの【加算】
メニュー表を用いて診療報酬を意識した救急外来診療を行うことで,必要な検査を必要なぶんだけ実施する心掛けができます。
各病院の研修医間の勉強会や、救急外来で勤務するスタッフとのカンファレンスなどでメニュー表を共有し、普段から診療報酬についてスタッフ全員で共通認識を持つことができるとより理想的です。
より詳しくは以下からご覧いただけます。
「救急外来診療メニュー表」で学ぶ“お金”の話 |医学書院 (igaku-shoin.co.jp)
★治療方針の具体的な指示出し(投与量・タイミング・指示の仕方)を常に意識する
私が救急科専攻医になった直後、難しいと感じたのは、切迫した救急診療での詳細かつ超具体的な治療方針の指示出しでした。
この指示の中には、治療にあたるチームの誰に指示するのかという項目も当てはまります。
まずこの事実が初期研修医終わりの自分にはあまり意識できていない盲点でした。
初期治療を開始する前に、コマンダーが今からくる患者さんの何に注意しどのような順番で検査、治療を行うかをあらかじめミーティングし役割分担をする。
そして、患者さんの現在の状況を逐一評価しながら各々の得意分野を見極めながら実際に指示を出していきます。
治療薬の指示をするときは具体的な投与経路と投与量をわかりやすく必要な情報だけ端的に指示します。
もちろんどのスタッフにもわかるよう一般名ではなく商品名で。
そして最も意識すべき重要なことは、この行程は普段からいつコマンダーになってもいいようにイメージトレーニングしていないと緊急の焦った段階で行えるものでは到底ないということ。
自分自身、まだまだ研修中の身で日々後悔することばかりなのですが、初療が終わった後上司の先生方と毎回反省会をして何がいけなかったか、次はどうするかを常に復習するようにしています。
★手技は将来後輩に教えるのだという自覚をもって修練する
私自身、まだまだ手技をやりたい盛りの身なのですが、こんな若手の自分でも後輩に指導する機会は多々あります。
その時に感じるのは、手技を言葉で人に説明するのは本当に難しいという事です。
言語化できるだけの知識があるという事は、手技の一つ一つの手順の意味を理解し行えているという事です。
自分自身これを意識して改めて勉強し直すことで、いままで少し我流でやっていた時よりも成功率や手際の良さが上がった気がします。
気がするだけかもしれませんが、知識を含め人に教えられるレベルまでかみ砕いて理解することは大切だなと日々感じます。
―――先生は、SNSでご自身の専門や役立つ医療情報を公開されています。発信の際にはどんなことを意識されていますか?
情報を発信する際は、届けたい人の顔を思い浮かべてみることが大切だと思います。
自分が発信しようとしている医療情報は初期研修医向けなのか、若手専攻医向けなのかを常に意識しつつ作成しています。
想定読者を強くイメージすれば、自然と必要とされているニーズがわかり、自ずとコンテンツの内容も決まってきます。
受け手の方々がどう感じるか、どんな風に職場で活用されるのかという皆様の日常にも思いをはせています。
一方的に見えるアウトプットという活動は、受け手の方々のことをしっかり考えることで、とても双方向性が高いものになるんです。
―――医師として、インフルエンサーとしてご活躍されている先生が、ご自身の健康を保つために実践されていることについて、お聞かせください!
エネルギッシュに活動するために、十分な睡眠は不可欠です。
最近は自分なりに工夫しつつ睡眠調整術を実践してみています。
具体的には当直明けは90分の睡眠サイクルを意識して昼寝をする、目覚まし時計はアラームタイプではなく、光目覚まし時計がおすすめなど。
当直時の持参物としておすすめのアイマスク、スクラブなどにもこだわってみています。
睡眠の質やコンディションを数値化できるウェアラブルデバイスの数値を参考にしつつ、何とか効率よく睡眠を取ろうと工夫を凝らしてみていますが、そもそも睡眠時間が足りなかったり、入眠前の行動についてデバイスに叱られることもしばしばです笑
三谷先生は、以下記事にてより詳しく睡眠調整術や当直先での工夫についてお話しされています。
日々を健やかに過ごすための睡眠法、要チェックです!
★【当直中の過ごし方】当直・夜勤中の仮眠効率を120%に高めるポイントまとめ|踊る救急医 (dancing-doctor.com)
★【夜勤入り・夜勤明け】救急科医師が実践している翌日に疲れを残さない睡眠調整法まとめ【快眠グッズも紹介】|踊る救急医 (dancing-doctor.com)
―――三谷先生、本当にありがとうございました!
治療のみでも気力や体力を酷使するにも関わらず、患者にかかるコストや負担を配慮したり、患者の現在の状況をしっかりと見てくれているとは、本当に頭が下がります…。
また、寝不足が懸念される救急医ですが、治療のためには効率よく睡眠をとることもとても重要なんですね。
これから救急医を志す方は、ぜひ参考にしてみてください。
三谷先生はTwitterにて、過去の医学生・研修医の頃の自分が本当に知りたかった事を中心に発信されています。
また初学者が悩む救急診療のポイントをまとめられた、著書『みんなの救命救急科』も出版されています。
ぜひチェックください!