虐待で脳が減る⁉脳機能とトラウマ治療の可能性

虐待などの不適切な養育「マルトリートメント※1」を受けた子どもは、遺伝子に変化が生じ、その度合いが強いほど脳の機能にも影響するとの研究成果を、福井大学らの研究チームは発表しました。トラウマの治療法の開発につながる可能性があるといいます。

研究では、過去にマルトリートメントを経験した児童(以下、マルトリ児)24名(平均12.6歳)と一般の児童(非マルトリ児)31名(平均14.9歳)を対象に唾液を採取。「オキシトシン遺伝子※2」のDNAを解析して比べたところ、マルトリ児は、遺伝子の一部にメチル基という分子が付着する「メチル化」が1.7倍に上りました。
 またMRI検査で子供の脳を調べたところ、メチル化が多いほど、脳の一部の容積が減り、活動が低下することが分かりました。
オキシトシン遺伝子のメチル化が、こうした脳の変化に関係していることが分かったのです。

マルトリ児は、脳の一部が縮んだり、トラウマを発症したりすることは知られていますが、治療のためのターゲットが定まっていませんでした。
研究者によると「遺伝子に付着したメチル基を取り除くことができれば、トラウマなどを緩和できるかもしれない」と言います。

医学用語集

※1 マルトリートメント
不適切なかかわりを指します。特に、大人の子どもに対する不適切な養育や関わり方をいい、身体的・性的・心理的虐待とネグレクトをまとめて指します。

※2 オキシトシン
オキシトシンは、脳下垂体後葉から分泌されるホルモンの一種で、9つのアミノ酸からなるペプチドホルモンです。妊娠時の子宮収縮や出産後の乳汁分泌を促進するため、女性特有のホルモンとかんがえられていた時代もありましたが、オキシトシンは男性にも存在します。
また近年では人間関係の形成などの社会行動や不安の解消などに大きく関係しているといわれており、絆ホルモンと呼ばれることもあります。


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