ボトックス注射と聞くと、おでこや目尻のしわ取りなど美容目的として想像する方も多いのではないでしょうか。
しかし、うつ病や不安症を緩和する可能性も見出されたとカリフォルニア大学が発表しました。
ボトックス注射とは?
食中毒を引き起こすことで有名なボツリヌス菌から抽出されたタンパク質(毒素)のことです。
毒と聞くと危険なイメージですが、治療で使用されるものは生理食塩水で薄めているため人体にも安全で副作用もほとんどないといわれています。
その毒素には筋肉を弛緩させる成分が含まれているのです。
そのため眉間やおでこ、目尻などの筋肉を動かすことで”しわ”が生まれやすい部分に注射すると、筋肉の動きが緩やかになり、”しわ”ができにくくなります。
一番耳にするのは先述のような美容目的ですが、筋肉を弛緩させるという効果はその他の場面でも多いに役立っているのです。例えば、筋肉が緊張することで起きる片頭痛や手足の痙攣、筋肉への負荷が偏ることで起きる首の痛みなど医療目的として多くの症状に活用されています。
研究内容
安全と言われるボトックスですが、他の薬と同様に完全ではありません。
そのため、アメリカでは食品医薬品局というところが、臨床試験では分からなかった副作用をデータベースにまとめているのです。
今回研究者たちは、ボトックス注射を受けた4万人の経過データを抽出し、それを元に良い方面での副作用例を探しました。
その結果、ボトックス注射を受けた人(頭部や首、眉間など)は、不安症になるリスクが22%~72%低下し、うつ病になる確率も他の受けてない人に比べ、大幅に下回っていることが判明したのです。
このことから、研究者はボトックス注射に含まれる”ボツリヌス毒素”が脳や神経などに作用して、不安な気持ちを引き起こす回路を麻痺させているのではと考えています。
同時に研究者は、脳の神経にボトックスがどのような影響を及ぼすのか今後解明したいと述べています。
将来的には、しわを取るついでにうつを解消するなど、現在よりも気軽に治療が受けられるかもしれません。