皆さんは他人がコロナに感染した際に何を想いましたか?
大阪大学をはじめとした研究グループは、
「不幸に見舞われることへの考え方」に文化的な差があるのかを日本人とアメリカ人で検証しました。
その結果顕著な違いがみられたのです。
日本人はアメリカ人よりも「日頃の行いが悪いから、不幸に見舞われるのだ」と考えやすく、
アメリカ人は「不幸もいつかは人生の糧になる」と考えやすいことが分かりました。
人間は他人が不幸に見舞われた際に、
「日頃の行いが悪い」と
その人自身に原因を求める傾向を内在的公正推論と言うそうです。
例としては、「~がコロナに感染したのは自業自得」など。
その一方で、
今は不幸でも将来的の充実した人生によって埋め合わせられると期待する事で
自分の抱える不安を抑えようとする傾向を究極的公正推論があります。
例えば、「今はコロナで苦しいけど、治ったらいいことが待っている」など。
今回の実験では、日本人88人と米国人81人に対し、
「突然倒れた街路樹で運転手が下敷きになり、重傷を負った」
という実際にはないニュースをみせ、
その運転手が
「窃盗を犯し在宅起訴中の高校教師」もしくは「周囲から慕われている高校教師」
というどちらかの情報を与えました。
その結果、日米どちらとも罪を犯した高校教師には内在的公正推論が行われる傾向にありました。
しかし日本人は特に、
関連性のない突然の不幸が何か悪いことをしたからだと考えやすい文化特殊性があったとみられます。
また、不幸に見舞われた人の行いが良い悪いに関係なく、
日本人は不幸が将来的に人生の糧になると考えにくい事も明らかとなりました。
研究者は、この背景として
日本人の多くが特定の信仰をもたないために
遠い未来の出来事を想像して今の不安を解消するという方法に馴染みがないのではないかと推測し、
このような不安の程度をコントロールする手段をもっていないことが
内在的公正推論をより強く行わせる可能性があると示しています。
今回の結果は研究者たちにとってWEIRD問題(※)や研究結果の再現性問題において、
重要な意味を持つとしています。
用語集
※ WEIRD問題:WEIRD(Western, Educated, Industrialized, Rich, Democratic,)とは、 西洋の、教育を受けた、工業化され、豊かで、民主的な人たちを対象に実施された研究結果をひろく一般と捉えてしまうこと。