皆さんはお寿司やお刺身などの生魚はお好きですか?
日本では生魚を口にする機会が多いですが、気を付けたいのがアニサキス(※)です。
この寄生虫が原因のアニサキス食中毒(以下、アニサキス症)は年々増加傾向にあり問題となっています。
アニサキスとはサーモンやサバなど日本でも人気な魚介類に寄生しています。元々は宿主の内臓に潜んでおり、その魚が死亡すると時間経過と共に筋肉へ移動します。その魚介類を人間が食べることで、体内にアニサキス侵入し激しい腹痛やアレルギー症状を引き起こします。
そんな恐ろしいアニサキス症ですが、現状までアニサキスを殺す特効薬は存在しないと言われていました。もし体内に入りこまれた場合は、病院で摘出してもらうほか方法がなかったのです。
そんな中、高知大学理工学部の研究チームは正露丸がアニサキスを殺す特効薬になり得るという報告をしました。
元々正露丸がアニサキスの活動を抑制したり、腹痛を和らげる効果などは報告されていましたが完全な証明はできておらず否定的な見解も多かったのです。
そこで研究チームは、正露丸がアニサキスの活動を抑えているのか、もしくは実際に殺虫効果があるのかを死亡した組織にだけ反応する特殊な染色を用いて実験しました。
正露丸液に30分間浸し、運動を停止したアニサキスに24時間後染色させたところほとんどの個体が部分的もしくは全体的に染まったのです。
また、通常生きたアニサキスは胃液の消化酵素では分解されず一週間近く生き延びます。しかし正露丸液に浸したアニサキスは、胃と同じ濃度の消化酵素に浸すと24時間以内に分解が始まりました。
これにより、正露丸によってほとんどのアニサキスが死ぬということが判明しました。
日本人にとってはなじみ深い正露丸が特効薬とは驚きですね。
最後に
以上の実験からアニサキスが死ぬことはわかりました。しかし万一生魚を食して腹痛などの症状がでた場合は自己判断せず、症状が和らいでも専門医を受診することが大切です。
用語集
※アニサキス
寄生虫(線虫)の一種。幼虫は白色の糸のように見え、長さはだいたい2~3cmほどと言われている。
サーモンやサバ、サンマ、カツオ、イカなどの魚介類に寄生。
アニサキスは、寄生する魚介類が死亡することで、時間経過と共に内臓から筋肉に移動します。その魚を生(もしくは不十分な冷凍や加熱のものも含まれる)で食べることにより、人間の胃壁や腸壁を突き破り食中毒(激しい腹痛、嘔吐、腹膜炎症状など)を引き起こす。