“薬物乱用頭痛”と聞くととても物騒に思えますが、当てはまる人は意外といらっしゃるかもしれません。
薬物乱用頭痛(薬剤の使用過多による頭痛)とは?
頭痛薬などの鎮痛薬を飲む回数が増えることで、頭痛の症状が悪化・慢性化している状態を指します。頭痛薬などを頻繁に使用することで脳が痛みに過敏になってしまい、少しの刺激で強い痛みを感じるようになるのです。
その結果、頭痛の起こる回数が増えて痛みも強くなり症状が悪化、さらに薬の効果も薄まっていくため使用頻度が多くなってしまいます。
日常的に頭痛のある人はいつ発作が起きるかわからないという不安があるため、痛いときだけでなく予防的に飲んでしまうことが多いようです。
そのため、発症する人の多くは片頭痛や緊張型頭痛などの人が多く、市販の鎮痛薬によるものがほとんどだと言います。
判断基準としては、月に15日以上の鎮痛薬を飲んでいる場合だそうですが、月10日以上飲んでいる人も要注意です。
研究内容
これまでは、日本での薬物乱用頭痛を抱えている人の割合は充分には明らかになっていませんでした。
そこで新潟県糸魚川総合病院の勝木氏らによって、糸魚川市内の15~64歳5,865人(男性2,981人、女性2,883人)を対象に調査が行われました。
その結果、この調査で片頭痛患者の59.4%、緊張型頭痛患者の79.7%が頭痛が原因で仕事などへ悪影響があるにも関わらず医師に相談していないことがわかりました。
加えて、それぞれ60.8%、48.1%が市販薬で対処していることが示されました。
このことから頭痛を抱える多くの人は、医療機関を受診せず、市販の鎮痛薬など自己判断の処置をしており、薬物乱用頭痛の予備軍が多くいることが明らかとなったのです。
その中でも41.1%が過去3ヵ月以内に頭痛がおこり、薬物乱用頭痛は2.3%(136人)が該当しました。
国外での薬物乱用頭痛の有病者は1~2%程度と報告されているため、ほぼ同等と言えます。
薬物乱用頭痛に該当する人の特徴としては、以下のような特徴がありました。
・年齢の中央値は46歳
・女性が80.1%
・頭痛の頻度はだいたい1ヵ月あたり15日~20日程度
・片頭痛の症状がある人は19.2%
・頭痛が9~24時間継続する人は44.5%
また、勝木氏らはクラスター分析により、薬物乱用頭痛の典型例として3つに分類し、今後の発症背景を考えていく上で重要であると示しました。
①働き始めたばかりの社会人特融のストレスを抱えている若者
②所謂、働き盛りの子育てに追われる中高年
③軽い認知機能障害や不安のある、頻繁に鎮痛薬を使用する高齢者
さらに、同氏は日本でも大規模研究や薬物乱用頭痛への啓発が将来的な課題であると述べました。
薬物乱用頭痛に当てはまるかもという方は、まず頭痛外来の専門医などに相談してみてはいかがでしょうか。