生まれ順は向社会性(※)の発達に影響を与えるという興味深い研究が発表されました。
生まれ順が早いと知能が高くなるなど、順番についてはこれまでも様々な研究が為されています。しかしながら、生まれ順が社会的な行動と関連してるかどうかについては年代などにより結果が異なるため議論の的となっていたのです。
そこで東京大学を始めとした研究グループが約3,000人の10歳児を対象として研究を行ったところ、生まれ順が遅い子どもは早い子どもに比べ、人助けする傾向が高いと分かりました。
これはMRIを用いて偏桃体(※2)の体積などを調べたもので、生まれ順が2番目以降の子どもは偏桃体体積などが大きく、向社会性が高いという関連が認められたのです。また女児では上記のような傾向でしたが、反対に男児では逆の傾向がみられたという発見もあったようです。
このことから研究者は、生まれ順が早い長子や一人っ子は知能面において有利であるのに対し、生まれ順が遅い子は向社会性の発達において有利という、それぞれの強みや生存戦略が異なると推測しています。
用語集
※1 向社会性:報酬など自己の利益は求めず自発的に他の人や集団を助けたり、役立とうとすること。対としては「反社会性」が挙げられる。
※2:偏桃体:神経細胞の集まりであり、好き嫌いなどを起こす情動反応の処理を行う主要な部位。好き嫌いの他にも直観力や恐怖、記憶形成、痛み、ストレス反応、特に不安や緊張において重要な役割を担っている。
本研究では生まれ順が遅い子は兄弟との競争など相対的に安心を感じにくい環境に対しての適応戦略として、偏桃体の発達を通じて向社会性を高めると推測している。